夜勤パートの健康診断について(介護・コンビニ・ビルメンテなど)

社会保険や労務のお話

「夜勤パートの労働者に対して、健康診断を受診させる義務はあるのでしょうか?」という質問をいただきました。

ポイントは2つあります。

  1. 夜勤(深夜業)という特定の業務であること
  2. パートタイムという短時間労働者であること

順番に確認しましょう。

特定業務従事者の健康診断

労働安全衛生法で、会社は、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施しなければいけないと義務付けられています。

通常の健康診断(いわゆる定期健康診断)は1年に1回でいいのですが、深夜業など特定業務従事者と言われる人たちについては、6ヶ月以内ごとに1回(または配置替えの時)、実施することが必要です。

特定業務従事者にかかる有害な業務(労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務)

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その
  他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化
  炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気
  又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
「特殊健康診断」(高圧業務や放射線・石綿を取扱う業務)とは全くの別物なので、混同しないよう注意して下さい。
このように深夜業は、特定業務従事者の健診にかかる有害な業務に含まれているため、6ヶ月以内ごとに1回(つまり年2回)、健康診断を行う必要があります。
検査項目については、原則として定期健康診断と同じです。頻度が高い、というだけです。

深夜業は、身体の通常のリズムに反して働くことになるため、調子を崩しやすいなど健康への悪影響が懸念されるので、より手厚い健康管理が必要とされているのです。

深夜業の業務に常時従事する労働者とは

夜勤にかかわる特定業務従事者の健康診断についての対象者は、「深夜業の業務に常時従事する労働者」です。

深夜業の業務に常時従事する労働者

  1. 「深夜業」とは、
    午後10時から翌朝午前5時までの間に勤務することを言います。
  2. 深夜業に「常時従事する」労働者とは、
    深夜の時間帯に、常態として、週1回以上または月4回以上勤務する人を指します。

午後10時から午前5時までの7時間ずっと勤務していなくても、一部がこの時間帯にかかっていたら対象になると考えられています。

具体的には、ビルメンテナンス業の夜勤や、コンビニの夜勤、介護施設の宿直、トラックの深夜ドライバーなどでしょうか。

そして、元々夜勤シフトで働く労働者だけでなく、残業が恒常的に深夜にまで及んでいる場合も対象になるということになります。

短時間労働者は健康診断の対象となるのか

深夜業とは関係なく、普段からよく質問を受けるのが、「パート・アルバイトにも健診を受けさせなければいけないのですか?」。

冒頭に書いたように、
「労働安全衛生法で、会社は、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施しなければいけないと義務付けられています。」

「常時使用する労働者」とは。
期間の定めのない雇用契約を結んでいる、いわゆる正社員は対象ですね。その他の短時間労働者が問題。

パート・アルバイトでも一般健康診断が必要な「常時使用する労働者」の基準

使用期間と労働時間数で、「常時」なのかどうかを判断します。両方を満たしたら該当。

 

  1. 使用期間
    一般業務従事者は、1年以上雇用される予定の者
    特定業務従事者(深夜業を含む業務)は、6ヶ月以上雇用される予定の者
  2. 労働時間数
    同種の業務に従事する労働者の、1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者
    (4分の3未満であっても、概ね2分の1以上である者については、受診させることが望ましい。)
使用期間について、例えばフルタイムの有期契約社員の場合、1年以上(深夜業の場合は6ヶ月以上)の雇用契約を結んでいる場合、またはすでに1年以上(深夜業の場合は6ヶ月以上)勤務している場合は、対象になります。
労働時間数については、フルタイムではなく、例えば週30時間勤務しているパートの場合、その会社の正社員と言われる人たちが週40時間で勤務しているのであれば、4分の3以上の要件に当てはまることになります。
深夜業に常時従事(週1日または月4日以上)していれば、使用期間や労働時間数に関係なく年2回の受診対象になるかと思いきや、特定業務従事者健診も一般健康診断の一つなので、短時間労働者の要件を考慮することになります。
わかりやすく下図にまとめられています。
赤枠の部分、◎(二重丸)のところが、深夜業を含む特定業務従事者の対象者です。
出典:厚生労働省パンフレット「パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう‼」より一部抜粋

※このパンフレットは2015年のもので少し古いので、助成金情報(キャリアアップ助成金健康管理コース)については現在変更されています。ご注意ください。

これらの健康診断の実施を怠ると、50万円以下の罰金に処せられることがあります(安衛法120条1項)。

一方、労働者側にも、会社が行う健診を受ける義務があります(罰則はありません)。
ただし、労働者には自分のかかりつけ医など、他の医師による健診を受けることも可能とされています。

(おまけ)さらに、その夜勤パートが副業だった場合

元々別の会社(A社)に勤務している人を、夜勤パートとして雇用(B社)することになった場合の話。

A社で昼間の仕事をしていて、年1回の定期健康診断を受診していた場合、
その労働者が、A社での健診結果をB社に提出してくれれば、B社は1回分の受診義務を果たしたことになり、残り1回をB社で受診させればよいことになります。

また、A社でも夜勤をしていて、年2回の特定業務従事者の健診を受診している場合、その2回分の健診結果をB社に提出してくれるのであれば、B社での健診は省略することができます。

ちなみに、副業の場合は労働時間の通算をすることになりますが、先ほどの労働時間4分の3以上の要件を見るときは、通算はせずに、各会社での所定労働時間でそれぞれ判断します。

まとめ

結論として、夜勤パートであっても、「深夜業に常時従事している」状態であり、「常時使用する労働者」ならば、健診を受診させる必要がある、しかも年2回、ということになります。

深夜業ではなく、通常の健康診断(定期健康診断)についてはこちらもどうぞ。
一般健康診断という括りの中に、定期健康診断や特定業務従事者の健康診断が含まれてます。混乱してきた方もこちらをどうぞ。

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