こんにちは、大阪市の社労士さちこです。
コロナ禍において、フリーランスをめぐる法制度やセーフティネットの不備が明るみに出てきています。
そこからフリーランスを保護しようという動きが加速しました。
・労働者・フリーランス側からすると・・・
自分のペースで好きな時間に働きたい、専門的な技術やスキルを活かしたい、雇用されたくないといった理由でフリーランスを選択している人もいれば、よくわからないままフリーランスとしての業務委託契約を結んだ人もいると思います。
・会社側からすると・・・
フリーランスなら、労災保険も雇用保険も社会保険も加入しなくてよいから会社の保険料負担はない、残業の概念もない、有給休暇も与えなくていい、解雇の問題もない、等と安易に考えてしまう会社も存在すると思います。
フリーランスの定義
今年3月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されました。
こちらのパンフレットがわかりやすいです。
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版(パンフレット)」
これによると、フリーランスとは「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」とされています。
個人で事業を行う人のことであり、原則として雇用という働き方ではないので、労働基準法などの労働関係法令が適用されない、ということになります。
フリーランスか労働者か
ただし、フリーランスとされていても、労働者性が認められれば、労働関係法令の保護を受けることになります。
労働者に当たるかどうかは、以下のような項目を確認し総合的に判断されます。
- 労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか
- 仕事の依頼や業務の指示に対する諾否の自由があるかどうか
- 業務内容や遂行方法について具体的な指揮命令を受けているかどうか
- 勤務場所や時間が指定され管理されているかどうか
- 受けた仕事を自分に代わって他人が行ったり補助者を使うことが認められているかどうか
- 報酬が指揮監督下における労働時間等をベースに決まっているかどうか
- 仕事に必要な機械等を発注者等と受注者のどちらが負担しているか
- 他の発注者の業務を行うことを制約されているかどうか
「指揮命令下の労働である」、「使用従属性が認められる」ときは、「労働者」にあたる場合があります。
契約の形式ではなく、客観的な実態をみて判断されます。
独禁法・下請法による規制
また、労働者でないからといって、保護されないわけではありません。
独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法(下請法)により優越的地位の乱用の禁止が適用され得るということです。
取引の立場上、フリーランスに優越している発注者が、フリーランスに対してその地位を利用して不当に不利益を与えることは、優越的地位の乱用として規制されます。
フリーランスの自由かつ自主的な判断による取引を阻害し、公正な競争を阻害するおそれがあるためです。
独禁法(優越的地位の濫用)・下請法上問題になり得る行為類型
- 報酬の支払遅延
- 報酬の減額
- 著しく低い報酬の一方的な決定
- やり直しの要請
・・・契約に基づいて業務を終えた後にやり直しをさせられる等 - 一方的な発注取消し
- 役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
・・・著作権を取り上げられる等 - 役務の成果物の受領拒否
・・・発注者の都合によって受領を拒否される等 - 役務の成果物の返品
- 不要な商品又は役務の購入・利用強制
・・・業務に必要でない商品の購入を取引継続の条件にされる等 - 不当な経済上の利益の提供要請
・・・契約の範囲外のサービス提供を求められる等 - 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定
- その他取引条件の一方的な設定・変更・実施
これらに当てはまる行為を、発注する側が行った場合は「優越的地位の乱用」として問題になります。
また、発注時には、正当な理由がない限り、発注者が取引条件を明確にする書面を交付しなければいけません。
労働関係法令の保護がなくても、このように独禁法や下請法による規制があるため、会社は、フリーランスとの合意されあれば何をやってもよい、というものではありません。
今後のフリーランス
副業の解禁などにもより、今後もフリーランスという働き方は増えていくものと思われます。
自分はフリーランスとして働くのか、また会社はフリーランスとの業務委託を締結して仕事を発注するのか等、きちんと選択したうえで行動しなければいけません。