こんにちは、大阪市の女性社労士 小森ゆかりです。
女性が妊娠・出産する場合の手続きについては、
通常の従業員の場合と、役員の場合とでは、異なります。
今回は、個人事業主ではなく、会社で社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している女性社長または女性役員についての産休・育休についてのお話です。
通常の女性従業員の場合
通常の女性従業員の方が妊娠・出産される場合、職場復帰されるまでの間に、会社で行う手続きとしては以下のようなものがあります。
- 産前産後休業中の社会保険料免除
- 出産育児一時金(従業員自身が病院経由で手続きすることが多い)
- 出産手当金
- 育児休業中の社会保険料免除
- 育児休業給付金
労働者か、事業主か
なぜ労働者と事業主とでは、出産・育児に関する給付や免除が異なるかというと、労働者にしか適用されない法律と、役員にも適用される法律とがあるからなのです。
従業員(労働者)には、労働基準法・健康保険法・厚生年金保険法・育児介護休業法・雇用保険法が適用されます。
一方、役員(事業主)は「労働者」ではないので、労働基準法・育児介護休業法が適用されません。
健康保険・厚生年金保険には加入しますが、雇用保険には加入できません。
なので、出産・育児に関する給付や免除が、通常の従業員のものとは一部異なります。
女性社長・女性役員の場合
- 産前産後休業中の社会保険料免除 →○適用
- 出産育児一時金(従業員自身が病院経由で手続きすることが多い)→○適用
- 出産手当金 →△報酬の有無による
- 育児休業中の社会保険料免除 →×対象外
- 育児休業給付金 →×対象外
1.の産前産後休業中の社会保険料免除について、
産前産後期間中、労務に服さなかった場合は、会社・本人ともに社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除されます。
これは役員報酬の有無に関わらず免除です。有給・無給・公休・欠勤問いません。
これに対して、
3.出産手当金について、
産前6週間、産後8週間の間、元の役員報酬のおおよそ3分の2の所得補償です。
こちらは役員報酬の有無により調整されることがあります。役員報酬が出ているのか、止めているのか、減額するのか、によって変わります。
※役員報酬の変更について
役員報酬については、いつでも自由に変えられるわけではありません。というか、変更するべきでない時期に変えた場合は、変更前と後の差額は損金算入されないということになってしまいます。
ただし出産による就労不能については、税務上やむを得ない事由としてこの定期同額給与の対象外と認められているそうなので、詳細は税理士さんにお問い合わせください。
5.育児休業給付金について、
雇用保険に加入していない役員の場合、育児休業給付金は支給されません。
(でも兼務役員の場合はまた話が違ってきますね。そのあたりはご相談ください。)
まとめ
簡単にまとめると、女性社長・役員については、出産に関するものは適用、育児に関するものは適用外、ということになります。
経営への影響が最小限に抑えられるよう、活用できる給付や免除制度はもれなく利用していきましょう。