【給与計算】保険料計算でよくある勘違い

社会保険や労務のお話


こんにちは、大阪市の社労士さちこです。


年度更新や算定基礎届の手続きのため、クライアントの賃金台帳や給与明細書を確認する日々です。

毎月の給与計算を委託していただいている顧問先の場合は、データをこちらで管理しているので今さら特にチェックすることなく、すんなり手続きに入ることができるのですが
給与計算を自社でされている場合は、帳票は給与ソフトから出力されるものだったり、エクセルや手書きの給与明細書のところもあったりして、そのデータの回収から始まります。

会社ごとに給与水準も違いますし、独自の手当が支給されてたり、これは一体??という初めて見る項目もあったりして、とても興味深く拝見しています。

給与計算、特に保険料控除が難しい

年度更新のための賃金データ確認なので、給与計算が正しく行われているかどうかをチェックしているわけではないのですが、よく目についてしまうのが保険料の控除誤り。

給与から差し引く保険料には、雇用保険・健康保険・介護保険・厚生年金保険がありますが、雇用保険料とその他の社会保険料とでは計算方法が異なります。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、その月の総支給額に対して料率を掛けます。

なので月々の固定給の他に残業手当の支給があって総支給額が変われば、雇用保険料も変動します。
総支給額には、通勤手当も含めます。
「通勤手当は非課税」と言うので保険料もかからないと思われることも多いですが、所得税がかからない(上限あり)だけで保険料はかかります。
最近よく見かける休業手当も含めます。

料率が誤っていることも時々あり。
令和3年度の労働者負担分は、一般の事業は0.3%、建設業や農林水産清酒製造業は0.4%です。
建設業なのに0.3%しか引いていないとか、中には事業主負担分も合わせて労働者の給与から引いていたこともありました。

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の計算方法

ここが一番誤りが多いです。

雇用保険料と違って、毎月の給与総額が多少変わろうとも、保険料がすぐそれに連動して変わる、というものではありません。

同じ保険料なのに、計算方法が違うなんて思わないですよね。
ですが根拠となる法律が違うので計算方法も異なります。

原則として毎年4・5・6月に支払われた給与の平均額から、その年9月~来年8月までの保険料額が決定されます。

  • 給与額が195,000円以上210,000円未満 → 標準報酬月額200,000円
  • 給与額が210,000円以上230,000円未満 → 標準報酬月額220,000円

というふうに、3ヶ月の平均給与額を元に、その人の標準報酬月額という枠が決められます。
この標準報酬月額に対して保険料率を掛けます。


健康保険料率は、協会けんぽか、健保組合か、また協会けんぽ内でも都道府県によって変わってきます。労働者負担分はだいたい5%前後。

厚生年金保険料率は、令和3年度で9.15%。

介護保険料率は、40~64歳の従業員に対して、健康保険料に上乗せする形でかかります。協会けんぽの令和3年度で0.9%。

この保険料がわかりやすく一覧にまとめられています。

令和3年度保険料額表【協会けんぽ】


また昇給など給与額に大きな変動があった場合は、月額変更届という年金事務所への手続きが必要で、それに伴って保険料が途中で変わることもあります。

この届け出を知らずに放っておくと、後で年金事務所からの調査で判明して、保険料をさかのぼって徴収されるという可能性もありますのでご注意ください。

まとめ

なかなか複雑な保険料の計算ですが、給与の支給に関わることなので、従業員の信頼を失わないように細心の注意を払って行いましょう。

計算ミスが不安で、従業員の給与データや勤怠管理と連動するような給与計算ソフト・クラウドシステムを導入されるのも一つの方法だと思います。

最初の初期設定がとても重要ですので、専門家にご依頼いただくこともご検討ください。

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