60歳以上で定年後再雇用時の社会保険の手続き【同日得喪】

社会保険や労務のお話

こんにちは、大阪市の社労士 小森ゆかりです。

先日、同月得喪(どうげつとくそう)のお話をしましたが、
今日は同日得喪(どうじつとくそう)について。

定年退職後に再雇用され、給与が下がった場合の特例です。

定年再雇用で給与が下がった場合の特例

例えば定年が60歳の会社で、65歳まで再雇用されるケース。
定年後は、それまでの役職を外れたり、勤務時間の変更などにより、給与が大幅に下がることがあります。

通常、給与額が変動したら、随時改定とか月額変更といって、
そこから3ヶ月の平均をとってみて、固定的賃金が2等級以上の差があった場合で、3ヶ月共に支払基礎日数が17日以上あったら、ようやく4ヶ月目から標準報酬月額の変更となり、社会保険料が変わることになります。

ですが、定年再雇用の特例があり、
1日の空白もなく、同じ会社に継続して再雇用され、給与が下がる場合、
随時改定を待たずに、下がった給与に応じて、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に変更することができる
つまりすぐに社会保険料を下げることができるというものです。

退職後に継続再雇用されるタイミングで、いったん雇用関係が中断したものとみなし、
定年退職日の翌日に被保険者資格を喪失し、同日に資格を取得することにより、
再雇用された月から、新たな資格取得時の給与に応じた社会保険料に変更することができます。

資格喪失日と資格取得日が同じ日になるため、これを同日得喪(どうじつとくそう)と呼びます。

手続き方法

年金事務所への届け出
  • 資格喪失届取得取得届をセットで提出する。
  • 添付資料あり。
    ①就業規則の定年についての記載がある箇所の写し、または退職辞令の写し等、退職したことがわかる書類
    ②継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書、または労働条件通知書の写し
  • 保険証は差し替えになるので、元の保険証は返却する。
その他の注意点
  • 60歳で定年退職した時だけでなく、その後1年ごとに有期労働契約を更新する時も対象になります。61歳とか62歳の更新時もチェックするということ。
  • 1等級の変動でも対象。
  • 70歳以上で厚生年金保険の資格を喪失し健康保険だけになった場合は、健保だけ対象。
  • パート・アルバイトでも、社会保険の被保険者になれる人なら対象。
  • 役員が退任して嘱託契約、給与減額する場合であっても対象。
  • 健保組合に加入している会社の場合は、組合にも同じ手続きが必要。
  • 電子申請でももちろん手続き可。

e-Govや社労夢を使って電子申請する場合、資格喪失届の備考欄に「退職後の継続再雇用者の喪失」を選択できるようになっているので、チェックを入れておきましょう。
喪失届と取得届と一緒に送信することはできませんが、両方を同じタイミングで送信すれば問題ありません。

同日得喪は、義務ではなく任意

この特例を適用すると、会社・従業員ともに保険料負担が減る、また在職老齢年金を受けている場合は年金額が上がる可能性があるというメリットの一方、デメリットもあります。

保険料の等級(標準報酬月額)が下がるわけなので、将来の年金という面から見ると金額が下がることになります。
また傷病手当金を受給することになった場合の日額が下がる可能性があります。

なので同日得喪は義務ではなく、同日得喪「することができる」という任意の扱いになっています。
対象となる従業員に説明した上で、慎重に手続きを進めましょう。

なお、同日得喪を行わなかった場合で、随時改定の対象になる場合は、月額変更届を提出することになります。

まとめ

雇用保険については、同日得喪的な手続きは不要です。
年齢の上限等ありませんので、週20時間未満の勤務になる等を除いて、引き続き加入となります。

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