男性の育休でも、育休終了時改定の対象になります!

社会保険や労務のお話
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従業員が育休を取得し復帰した場合、出産前より残業が減ったり、そもそもの勤務時間を減らして短時間勤務に変更したりして、給与が下がることがあります。

随時改定に該当しないから社会保険料は下がらないなあと思いきや、育児休業終了時の月額変更届という仕組みがあり、随時改定より緩やかな基準で、標準報酬月額の改定を行うことができます。

これは女性の従業員だけでなく、男性で育休を取得した従業員も対象になります。

男性の場合、まだまだ短期間の育児休業しか取得せず、復帰後は通常勤務にそのまま戻るというパターンが多いため、育休終了時改定に該当するケースは少ないかもしれません。
が、育休期間の長短に関わらず適用可能ですので、忘れずに検討はするようにしましょう。


そしてこの改定は、男女ともに「行わなければいけない」のではなく「従業員が希望すれば行うことができる」というものです。

それはメリットもデメリットもあるからです。

会社としては、こういった手続きがあることを把握した上で、従業員に確認を取ってから、手続きを進めるようにしましょう。

育児休業等終了時報酬月額変更届

育休終了日に、3歳未満の子を養育している被保険者は、次の要件を満たす場合、随時改定に該当していなくても、育休終了後3ヶ月間の報酬平均額に基づき、4ヶ月目から改定することができます。

通常の月額変更(随時改定)よりも、条件が緩く設定されており、実際の給与の低下に応じた保険料負担となり、育児をしている従業員の経済的負担の軽減を図ろうという仕組みです。

改定の要件
  1. 従前の標準報酬月額と、改定後の標準報酬月額との間に、1等級以上の差が生じるとき
  2. 育児休業等終了日の翌日が属する月以後3ヶ月のうち、少なくとも1ヶ月における賃金支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)であること

 ※4分の3基準を満たす短時間就労者(パート)について、3ヶ月間全て17日未満の場合は、
  そのうち15日以上17日未満の月の報酬平均をとります。

→上記1・2を満たすと、育児休業等終了日の翌日の属する月以後3ヶ月間に受けた報酬の平均額に基づき、4ヶ月目の標準報酬月額から改定されます。

通常の月額変更届(随時改定)と違って、固定的賃金の変動がなくてもいいし、2等級以上の差がなくてもいいし、3ヶ月間全て17日以上なくてもいいのです。

末締め・翌月20日払の会社で、5/15育休終了、5/16職場復帰したケース

5/16復帰なので、5月からの3ヶ月間を見て検討します。

 ① 5月中に支払われた給与(5/20払) 0円     (4/1~30のうち、0日勤務分)
 ② 6月中に支払われた給与(6/20払) 100,000円 (5/1~31のうち、10日勤務分)
 ③ 7月中に支払われた給与(7/20払) 180,000円 (6/1~30のうち、フル出勤分)

支払月ベースで考えるところが注意です。

①復帰後1ヶ月目は、5/20に支払われた給与を見るので0円、4/1~4/30の勤務日数は0日となります。だってまだ休業中ですのでね。

②復帰後2ヶ月目は、6/20に支払われた給与を見ます。5/15に復帰したので、そこからフルに出勤したとしても半額くらいですよね。17日未満のケースも多いと思います。

③復帰後3ヶ月目は、7/20に支払われた給与。フル出勤したら満額。

こんな3ヶ月の場合、①②は支払基礎日数17日未満なので除外、③のみが対象となり、標準報酬月額180,000円が3ヶ月の平均額となります。

この180,000円と、これまでの標準報酬月額とを比較して1等級以上変動していれば、8月保険料(翌月徴収の場合、9/20払の給与から控除する保険料)から改定できます。

女性従業員の場合で、育休を取得せず産前産後休業から復帰する場合も、同じく「産前産後休業終了時月額変更届」の制度があります。

メリットとデメリット

終了時改定を行うことのメリットは、やはり保険料負担を減らせること。

デメリットは、出産手当金や傷病手当金の金額が減る可能性があるということ。この先に再び出産や育休の予定がある場合は、それも踏まえて検討しましょう。

同様に将来の年金も減るのかなと思うのですが、「養育期間標準報酬月額特例申出書」の制度により、年金を計算する際には標準報酬月額が下がる前の月額を元に計算することができます。
こちらも男女問わず、従業員の申出により適用される仕組みです。

また、この終了時改定で標準報酬月額を変動させた結果、その後の昇給のタイミングで随時改定の対象となる等、思いがけない結果になる可能性もあります。

まとめ

何がベストなのか、なかなか難しいですが、考えられる可能性を考慮して選択したいものです。

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